宿の横の路地で落ち合った四人は、男二人、女二人に別れて通りに出た。

「じゃあね~、よいっちゃん。早く帰ってきてね~」

ひらひらと手を振りながら、藍がお蓉を引っ張って歩いていく。
与一も曖昧に笑って手を振り、二人が見えなくなってから三郎太を促した。

「さて。俺たちも行こうか」

歩き出しながら、三郎太はいきなり与一を小突いた。

「お前、前は全然言わなかったじゃねぇかっ。あんな恋人がいるなんて」

「恋人・・・・・・」

微妙な顔になった与一を、照れているものだと思いこみ、三郎太は、さらににやにやと突っ込んでくる。

「いやいや、安心したよ。ほんとに心配してたんだぜ」

「何で心配なんだよ?」

三郎太は腕組みをして、一人したり顔で頷きながら言う。

「そりゃお前。俺ぁ昔っからお前を知ってるが、お前はそれこそ昔っから、子供のくせに・・・・・・何というのかな、何事にも執着しないというか。冷めてるというか。再会してからも、その辺りは変わってないようだったから、人を好きになることとか、ないんじゃないかと思ってたんだよな」

言われて与一は、記憶を手繰り寄せた。
確かに三郎太の言うとおり、今まで大して強く想ったことのある人はいない。