「何でそんなに皆が皆、実体を知らねぇんだ・・・・・・」

うんざりと、与一は頭を抱える。

「月輪院様の元から来た、預かり物だそうです」

「預かり物?」

新たな情報。
だが、やはりそれで何がわかるわけでもない。

再び頭を抱えていた与一は、ふと藍が与一の胸に頬をつけたまま、考え込んでいるのに気づいた。

「どうか?」

藍の顔を覗き込んで問う与一に、ちらりと視線だけを上げ、藍は、うん、と小さく頷いた。
そのまま黙っているところを見ると、ここではできない話のようだ。

そうこうしているうちに、障子の向こうの空が白み始めた。

「やべっ! お嬢さん、早く帰らないと、大騒ぎになりやすぜ」

三郎太が、言いながら腰を浮かした。
お蓉も、慌てたように立ち上がる。