「ねっ? あなたは将来、千秋屋の若旦那だって言ったでしょ?」

「菊助さえ良ければ、わたくしはそうなることを望むのだけど」

軽く言う藍に便乗して、お蓉も大胆なことを言う。
感涙にむせぶ三郎太は、最早お蓉の言うことなら、何でも聞きそうな勢いだ。

「・・・・・・いい雰囲気のところ、水を差すようで悪いんだがね」

冷めた目で成り行きを見守っていた与一が、無感動に口を挟む。

「御珠を手に入れたら、あんたぁ命、狙われるぜ」

熱い瞳で見つめ合っていたお蓉と三郎太が、かちりと固まった。
ややあってから三郎太が、ゆっくりと与一を見る。

「・・・・・・え?」

普通の人間は、いきなり命を狙われると言われても、実感が湧かないものだ。

「辰巳はあれで、荒事に慣れてる。だからこそ、旦那は辰巳に託したのかもしれないぜ。可愛いご新造を、わざわざ危険な目に遭わせたくはないだろう?」

「あなたは、衆道の者なのですか?」

お蓉がいきなり、キッと与一を睨みながら、居住まいを正した。