「・・・・・・おい、三郎太。お前、今は菊助ってんか」

三郎太の態度でわかったが、一応確かめるために与一が聞くと、三郎太はちらりと与一を見、何とも照れくさそうな顔をして頷いた。

「三郎太がお蓉さんの行動を知ったのぁ、偶然じゃないのか? しかも、止めようとしてたんだろ?」

「菊助は、どんなに忙しくても、わたくしが寝床に入る前には挨拶にきてくれます。そのときに、わたくしが寝間着でなかったら、おかしいと思うでしょう? 菊助なら止めようとはしても、話を聞けば、わたくしの気持ちをわかってくれると思ったので、屋敷では詳しいことは言いませんでしたけど、道々少し話しながら、ここまで来たのです」

要するに、三郎太も結局は共犯になるところだったということか。

「お、お嬢さん・・・・・・。俺のことを、そんな風に思ってくださってたんですか・・・・・・」

お蓉に熱い瞳で見つめられ、三郎太は茹で蛸のようになりながらも、感激に打ち震えている。

確かにこの調子では、お蓉に頼まれれば、盗みの共犯ぐらいやりかねない。
それどころか、お蓉に累が及ばないよう、自分一人で犯行を行おうとするかもしれない。