与一は一つ息をつき、いつの間にか与一の前に座って、三郎太と話していた藍を、自分のほうに引き寄せた。
後ろからぐい、と引っ張られて、藍は与一の組んだ足の上に乗る。

「で? お嬢さんは、何をしにいくつもりだったんだ? 俺の察するところ、下駄屋に行くつもりだったんじゃねぇのか?」

さっさと話を進めたい与一の言葉に、お蓉の肩がぴくりと揺れた。

「あら。最近下駄屋に縁があるわねぇ。でもこんな時間に行っても、お店は開いてないわよぅ?」

藍が与一の腕の中で、すっとぼけて言う。

「辰巳の持ってるっつぅ、願いの叶う御珠を取りに行こうとでも思ったのかい」

お蓉が、はっとしたように顔を上げる。

「ど、どうしてそれを・・・・・・」

「驚いたな。当たりかよ。大店のお嬢様ともあろう者が、盗人かい?」

呆れたように言う与一に、お蓉は身を乗り出して訴えた。

「違います! わたくしは、何も盗もうなどと思ったわけではありません! わたくしが、是非とも御珠を見たいと言ったら、お福さんが見せてくれるって・・・・・・」

「お福さん?」