だが三郎太は、寝ていたところにいきなり見知らぬ人間が二人も入り込んだことの詫びとして、藍にも頭を下げた。

「あ、彩ちゃんにも、悪かったと思ってるよ。起きたらいきなり知らない人間がいるんだもんな。びっくりしたろ」

少し笑いながら、手を合わせてみせる三郎太に、藍は笑顔を見せた。

‘彩ちゃん’という呼び方といい、謝り方といい、三郎太は、完全に藍を子供と思っている。
それがおかしかったらしい。

一方与一は、微妙に複雑な気持ちだ。
何となく、三郎太の態度から察するに、彼は藍を、結構な子供と思っているのではないか。
そのような子供と、こういう宿に入るようないい仲だと思われるのは、幼なじみなだけに、避けたい事態だ。

「うふふ。さすが若旦那さんは、分別があるわぁ」

「だっ、だから、俺はそんな身分じゃないって・・・・・・」

「照れない照れない。今はそうかもしれないけど、近い将来は、きっと千秋屋の若旦那よ」

与一の危惧を気にもせず、藍は楽しそうに三郎太をからかう。