「そもそも、何で俺が、女のことを考えたら駄目なんです」

「やん。いやらしいわね、よいっちゃんたら」

再び藍は、両手で己の頬を包んで、身を捩る。

「はぐらかさないでくださいよ」

「もぉ、ノリが悪いんだから。よいっちゃんはぁ」

ぶちぶちと言いながら、藍は敷き布団をめくる。
端のほうに隠れていたのは、SAAより少し短い、エンフィールド・リボルバー。

「あたしたちは、いつその辺の人間が的になるか、わからないのよ。下手に恋人なんか作って、その人に殺しの依頼がきたら?」

藍はエンフィールドを、与一に差し出す。

「あんた、躊躇いなくコレの引き金、引ける?」

与一は藍に渡された、エンフィールドを見つめた。

硬く重く、冷たい感触。
与一が十五になった年に、藍が与えたものだ。