「ああもう~。折角よいっちゃんに、愛情たっぷりの美味しい料理を作ってあげようと思ってたのに~~っ」

言っていることは可愛いのだが、与一には、どうも藍が『愛情たっぷり』とか言うと、妙なものが入っていそうに思えてしまう。

「そういやぁ、夕餉、食いっぱぐれましたね」

「そうねぇ・・・・・・」

よほど残念だったのか、藍はしょぼ~んと与一の上に倒れるように覆い被さった。
小袖を合わす暇無く、再び抱きつかれてしまったな、と思いながら、与一は、ふと以前藍が言っていたことを思い出した。

「でも藍さんの食事は、俺の生気なのでしょう? だったら、別に夕餉食いっぱぐれても、腹は減らないんじゃないですか?」

「あたしのことは、いいのよぅ。よいっちゃんに、ちゃんとしたもの食べさせてあげたかったのに」

与一の上に覆い被さったままの藍が、覇気のない声で答える。
本気で残念がっている藍を無理矢理押しのけるのも可哀相な気がして、与一は仕方なく、藍を乗せたまま目を閉じた。