「ヤなこと思い出させないでよ! わかってるだろうけど、よいっちゃんじゃないと、そんなこと、許すわけないでしょっ!」

何で『わかってるだろうけど』なんだろう、とぼんやり思いながら、与一は自分の上できゃんきゃん吠える藍を見上げた。

ひとしきり吠えた後、藍はぺたんと与一の上に身体を倒した。

「ちょっと藍さん。俺、裸なんですよ。小袖着ますから、どいてくださいよ」

与一は傷の手当てをしたままの姿なので、小袖の前は全開なのだ。

「いいじゃない。素肌のほうが、暖まるわよ」

構わずぐいぐいと与一に抱きついていた藍は、不意にがばっと起き上がった。

「ああっ! よいっちゃん! お買い物したやつ、忘れてきちゃったじゃない~!」

「あ・・・・・・。そういえば・・・・・・」

小太刀は忘れず引き抜いてきたが、買い物した食材のことは、すっかり忘れていた。
もっとも覚えていたとしても、そんなものを回収する余裕もなかったと思うが。