言った瞬間、与一の胡座の上に藍が飛び乗り、与一は思わず藍の脇の下に手を突っ込んで、彼女の身体を抱え上げた。

一瞬だったが、軽いとはいえいきなり乗られた股関節が、悲鳴を上げたのだ。

「何するんですかぁっ! 股関節が、外れるかと思いましたよ!」

「やだっ! 実の姉じゃないなら、ますますそんな人のこと、考えちゃ駄目~っ!」

与一に抱えられたまま、藍は、きぃきぃと文句を言った。

「何を心配してるんです。お三津のことは、色恋なんかじゃありませんよ」

振り回される細い腕を避けながら与一が言った途端、藍はぴたりと動きを止めた。

「本当にぃ~?」

上目遣いで、じぃ~っと睨む藍を、猫のようだと思いながら、与一は自分の前に彼女を降ろした。