市から出た二人は、色町のほうには足を向けず、反対側の林へ進んだ。

「うう。買い物する前に気づかないなんて、しくったわぁ」

ぶつぶつと言いながら、藍が手に持った風呂敷包みの重さを確かめるように揺らす。

「括り付けるより、これはどっかに置いたほうがいいかしらね」

「そうですねぇ」

与一も藍より少し大きな風呂敷包みを抱えている。
脇腹に傷を負っているので、余計な重りはつけたくない。

というのも、市を出る少し前に、後をつける気配に気づいたのだ。
さすがに人の多い市の中では襲ってこなかったが、このままついてこられると、後々厄介だ。

慣れない依頼で結構参っている二人は、尾行をまくより、打ち懲らすことにした。
さっさと有力な情報を得て、とっとと今回の依頼を済ましてしまいたい。

今つけてきているのは、まず間違いなく御珠狙いの輩(やから)だろう。
しばらく気づけなかったことといい、ただの盗賊やチンピラの類ではない。
一筋縄ではいかないかもしれないが、上手くいけば、相当な情報を得ることができる可能性もある。