「へぇ。じゃあ兄さんも、どっかの奉公人なのかい? あんまりそうは見えないけど」
「いいや。俺はまぁ、いい人に引き取ってもらえたんでね。その人に仕えてるのさ。そういや辰巳さんも、結構な人生を送ってきたようじゃねぇか」
与一は部屋の中をつぶさに観察しつつ、話題の中心を己から外した。
あまり自分のことに、興味を引きたくはない。
「そういえばそうだな。今はお互い、安定した職につけてるみたいだがな」
安定した職といえるのだろうか。
おそらくこの中でまともなのは、そう言って明るく笑う三郎太だけだろう。
「そうそう。千秋屋さんは、優秀な跡目もいることだしな。あの下駄は、結納の品かい?」
辰巳が三郎太に言った。
奉公人が運んできた茶を口元に運んでいた三郎太の手が、宙で止まる。
「いいや。俺はまぁ、いい人に引き取ってもらえたんでね。その人に仕えてるのさ。そういや辰巳さんも、結構な人生を送ってきたようじゃねぇか」
与一は部屋の中をつぶさに観察しつつ、話題の中心を己から外した。
あまり自分のことに、興味を引きたくはない。
「そういえばそうだな。今はお互い、安定した職につけてるみたいだがな」
安定した職といえるのだろうか。
おそらくこの中でまともなのは、そう言って明るく笑う三郎太だけだろう。
「そうそう。千秋屋さんは、優秀な跡目もいることだしな。あの下駄は、結納の品かい?」
辰巳が三郎太に言った。
奉公人が運んできた茶を口元に運んでいた三郎太の手が、宙で止まる。


