つるりとした能面のような顔の奉公人は、ああ、と小さく呟き、与一の横に膝を付いた。

「申し訳ありません。辰巳は今日は、仕事の仕上げで、一日籠もってますんで」

怪我をして、とは言わない。
店的には、客が減るのを防ぐためだが、辰巳からすると、変に自分の不調を漏らして、敵に付け入る隙を与えないためだろう。

「そうかい。ちょいと急ぐんだがなぁ。仕上げってことは、俺の下駄も今日の仕事に含まれてるんかな」

少し困ったような顔をして、奉公人を窺う。
とりあえず、辰巳に与一が来たことを知らせる必要がある。
そうすれば、昨日の今日だ。
辰巳のほうから、何らかの動きがあるだろう。

少し考えてから、奉公人が腰を浮かしつつ、口を開いた。

「それじゃ、ちょっとだけ聞いてきま・・・・・・」

思惑通りに運びそうな雰囲気に、ひっそりとほくそ笑んだ与一だが、奉公人の言葉は、途中で背後からの大声にかき消された。

「与一じゃないか」