「本当は、何日か休んだほうがいいんだけどね。せめて今日一日でも、寝ておくのが当然なんだけど・・・・・・。大丈夫?」

少し前を歩きながら、藍が気遣わしげに与一に言う。

朝餉と不毛な会話の後、支度を済ませて、二人は色町を出た。
今日も西の市へ向かう。

「ま、大丈夫でしょう。縫ってもらったので、そう簡単に傷は裂けないでしょうし」

与一が襲われたのは、昨日。
藍が傷の手当てをして、二人して眠り込んでから、目覚めたのが昼前。
それから朝餉をとって、すぐに出てきたので、怪我をしてから一日も経っていないのだ。

若干右足を引き摺るが、すでに耐えられないほどの痛みはない。
無理をしているに変わりはないが、辰巳も襲われて怪我をしていた。
苦無が刺さった傷口は、そう大したものではなかったが、少しでも怪我を負った今が、狙われる機会かもしれなかった。