「好いた者同士ってのは、お互いが相手のことを好いてることを言うんですよ」

「よいっちゃんは、あたしのこと好きじゃないのぉ?」

うるうると、大きな目に涙を浮かべて、藍が縋り付く。
昔から、万事がこんな調子だから、感情面が麻痺してしまったのかもなぁ、と、与一はとりあえず、藍の頭を撫でながら考えた。

「ね、よいっちゃんは、あたしのことが嫌い?」

「嫌いじゃないですよ」

「じゃ、好き?」

「はいはい」

「ほんとに?」

「ええ」

交際初期の恋人同士のようなやりとりをしながら、与一はげんなりと、自分の胸にへばりつく藍の頭を撫で続けた。