きょとん、と藍が、与一を見る。
あれ? と与一は、少しだけ目を見開いた。

まさか、知らないのだろうか?

「口ですよ」

「口同士ってこと? ・・・・・・絶っっ対、嫌っ!!」

藍が、眉間の皺を深くして、眦をつり上げる。

「藍さん、まさか、遊郭で何が行われてるかとか、知らないわけではないですよね?」

考えもしなかったが、藍ならあり得る。
何せ、存在自体が不思議なのだから。

が、藍は己の頬に手を当てて、少し赤くなって横を向いた。

「何言ってるのよ。いやらしいわね、よいっちゃんたら」

恥じらうように、横目で与一を見る。
もっとも口が笑っているので、いつもの演技だろうが。