ちらりと藍を見ると、苦悶の表情で頭を抱えている。

「でも、辰巳の信頼は、ちょっとは得られたとも思います」

「うん・・・・・・。そうね」

う~~む、と、相変わらず藍は頭を抱える。
お互い、相手に近づいた距離は五分五分といったところだ。

「俺から動きましょうか」

与一が、箸を置いて言った。

「でもよいっちゃんは、大怪我してるじゃない」

「だから、また刺客に襲われたときのために、藍さんに援護してもらいます。俺が辰巳と話してる間、近くに潜んでいてください」

なるほど、と藍が顔を上げた。

「あっでも、万が一辰巳に襲われたらどうするのよ。衆道街じゃないとはいえ、その危険がないわけじゃないのよ?」

「・・・・・・そのときも、助けてくださいよ。でも俺は男ですから、同じ男同士、何とか太刀打ちはできるでしょう。でも藍さんは、そうはいかないでしょう?」