もしかして、こういう状況というのは、男にとっては地獄なのではないだろうか。
目も眩むような美少女に抱きつかれているのに、手出しできないのだ。
まさに、生殺し状態・・・・・・。

だが与一は、そうなのかもな、とは思っても、まるで人事のようにしか思えない。
普通の男だったらそうかも、ぐらいにしか思えず、己が今まさに生殺し状態だとは思えないのだ。

「やっぱり俺は、おかしいんですかね」

ぽつりと呟いた与一に、藍が顔を上げる。
見上げる藍の肩に手を回し、抱き寄せてみる。

「あら。さすがのよいっちゃんも、妙な気起こしちゃった?」

与一にぴったりくっついたまま、藍がにこにこと言う。
与一はしばらく藍を見つめ、やがて首を傾げた。

「う~ん。起きるかと思ったんですけどね」

そう言って、手を離した。