次に裁縫箱から針を取り、灯を入れた行灯の炎に翳して炙る。
絹糸を通し、与一に向き直った藍は、再度与一の顔を見ると、きゅっと唇を噛んで息を整え、一気に傷口の端に針を突き立てた。

「・・・・・・っっつぅっ」

与一が呻き、眉間に皺が刻まれる。
突き立てた針はそのままに、藍は一旦手を離し、奥歯を噛み砕かないよう、棒状に丸めた布を、横向きに与一の口に押し込んだ。

「我慢して。傷、縫っちゃうから」

与一の額の汗を拭い、彼の頬を両手で包み込んだ藍は、子供にするように、己の額と与一の額を合わせて言った。

うっすら目を開けた与一に微笑みかけ、優しく頬を撫でると、表情を引き締め、再び針を握った。

針が皮膚を貫通するたびに、与一の眉間の皺が深くなり、くわえた布の奥から、くぐもった呻き声が漏れる。