藍は、与一が使ったのだろう、傍に置いてあった桶を手に取ると、素早く一階に駆け下り、中の血色の水を捨て、新しい水を汲んで、階段を駆け上がった。

綺麗な布を水につけて絞り、まず傷の周辺の血を拭い去る。
傷に顔を近づけて、傷口の様子をじっと観察した藍は、ちら、と与一の顔に視線を投げた。

気を失っている与一の顔は蒼白で、額にうっすら汗が浮いている。
藍はしばらく考え、意を決すると、箪笥から小さな袋と裁縫箱を取り出した。

袋の中には、薬の包みがいくつか入っている。
藍特製の、痺れ薬だ。

藍は指先をちょっと舐め、薬を少し指先につけると、慎重に傷口の外側を囲むように、痺れ薬をつけていった。