「それも、人による。上客に気に入られりゃ、仕事を斡旋してもらえるかもしれん」

「たとえば、どんな?」

藍が、風弥にしなだれかかりながら、重ねて問う。
懐に入っていたほうが、姿はわかりにくいものだ。

「そうだな。ま、あんまり人目につかない仕事が多いかもしれんが」

にやりと笑う風弥に、藍も少し口角を上げた。
いい方向に、話が進んでいる。

「人目につかないって、やばい仕事?」

藍が、小さく身体を震わせてみせる。

「さほどやばくはないさ。本当にやばい仕事なんざ、素人の陰間なんかに任せられん」

「素人じゃできない仕事もあるってことかい。まさか、殺しとかじゃないだろうね?」

思いっきり怯えた表情で、藍はちらっと風弥を見上げた。
案の定風弥は、藍を抱く手に力を込め、得意そうに笑う。