離してくれてもいいのに、と思いながら、藍は風弥の煙管を見ながら話を続ける。

「寺の稚児は、坊さんになるっていう道が決まってるけど、ここの陰間はそれだけでやっていってるのか? 俺はまだ、この世界に入ったばかりだから、いろいろわからないんだ。やっぱり他に、何か職を持ってるんかな」

風弥は、煙管をくわえたまま、藍の顎に手を添え、顔を上げさせた。
笠はきちんと紐を顎の下で括っているため、顔を上げたところで落ちることはないが、藍は少しひやりとする。

「人によるだろうさ。身なりに異常に気を遣う奴は、身体の手入れや着る物に金がかかるだろうが、そういうことに、さほど感心のない奴は、食うことにだけ困らなければいいだろ。だったら陰間稼業だけでも、生きてはいける。ただ、そんな小汚い陰間に、上客はつかないがな」

「そうかぁ。でも陰間なんてやってたら、まともな職にはつけないんじゃないか?」

言いながら風弥の手を握り、さりげなく顎から離す。
あまり顔を見られたら、女だとばれるかもしれない。
陰間の中には、女っぽい奴もいるため、多少のことなら大丈夫だろうが。