一方藍は、もう一つの色町---女郎屋の立ち並ぶ色町ではなく、一見普通の茶屋が建ち並ぶ衆道(しゅどう)街にいた。

---う~ん・・・・・・。ちょっと異様な雰囲気だわねぇ---

藍は茶屋の店先で団子を食べつつ、往来を眺めた。
西の市の一番端っことはいえ、一応市の中にあるのに、この衆道街は、他のところに比べて、格段に人の行き来が少ない。
街自体も、通り一本だけの小ささだ。
ほとんど知る人ぞ知る街なのだ。

---お店に行くのは、避けたいしねぇ---

店に行けば、女郎のように客待ちの陰間がいるのはわかっているが、部屋に入ればやることは一つだ。
陰間には、女郎のように、芸事を見せるような技はない。

それに、下手に部屋に入って接近すれば、女とわかってしまうかもしれないし、それ以前に、笠を取らねばならない。
顔を曝せば、やはり女とわかってしまうだろう。

さらに、そんな危険を冒して部屋に入ったところで、選んだ陰間が聞きたい情報を持っているとは限らないのだ。