攻撃に使っているもの---与一はそこここに突き刺さっているものを見た。
見覚えのある苦無。

「うっ!」

不意に上がった声に顔を上げると、辰巳が床に転がっていた。

「辰巳さん!」

与一は傷の痛みを堪え、素早く辰巳の前に飛ぶと、一瞬で息を整え、思い切り手の平を畳に打ち付けた。
畳が浮き上がり、辰巳目掛けて飛んできた苦無を吸収する。

そのまま間髪入れず、与一は近くに突き刺さっていた苦無を引き抜き、庭の松の木目掛けて投げつけた。
苦無が松の木の中に消えると同時に、木から人影が飛び出す。

人影はそのまま、裏通りに消えた。

与一は心の中で舌打ちし、再度の攻撃の気配がないことを確認すると、倒れている辰巳の傍へ駆け寄った。