傷口を洗い、塗り薬を塗りつける。
手際良くサラシを巻き付け、きゅっと縛ると、藍は与一の血で汚れた手を洗った。

「うん。そんなに深い傷じゃないし、毒も仕込まれてないわ」

「はぁ、どうも」

間の抜けた礼を言い、着物を戻そうとした与一の手を、藍が掴んだ。

「こらっ。よいっちゃんの手、まだ血がついてるじゃない。着物の襟が汚れるわよ」

「もう乾いてますよ」

与一が言い終わらないうちに、藍は掴んだ与一の手を、桶の中に突っ込む。
そのままごしごしと、綺麗に血を洗い流した。

「さぁ、その着物、洗うから着替えて」

手を拭き、桶を抱えて立ち上がりながら、藍が言う。
部屋から出て行こうとし、思い出したように、ひょいと振り向いて、布団を目で指した。

「あ、今夜はもう出かけないから、一眠りしましょうね」