日がほとんど落ちてから、二人は再び西の市に向かって歩き出した。

大好物を食べて満足げな藍が、与一のすぐ前を飛び回るように歩く。
どう見ても、ぶらぶらと散歩をしている二人連れにしか見えない。

「さて。とりあえず走りますか。よいっちゃん、酔っぱらってないでしょうね?」

「一合ぐらいで酔いませんよ。それより、いきなり全速力で走るほうが、怪しいですよ」

「だから、こうするのよ」

言うなり藍は、悪戯っぽく笑いながら、ぽんと飛び上がり、与一の頭をぽかっと叩いた。

「てっ!」

「うひゃひゃ。ここまでおいで~」

思いっきりふざけた態度で、藍がくるくる回りながら走り出す。

「こらっ! 待てっ」

藍の意図がわかり、与一が藍を追いかける。
ふざけているように見せて、徐々に速度を上げる。