「わ、わかったっ! 何でも聞くからっ・・・・・・!」

「じゃあね~。この子、あたしに頂戴?」

にっこりと微笑んだまま、少女は与一を指差した。

「あ、売り物だから、やっぱりお金がいるかしら?」

言いながら、何故か裾に伸びた少女の手を見た人買いは、手と首をちぎれんばかりに左右に振って叫んだ。

「いやっ! いい! そんなモン、いいからっ!!」

「でも、悪いわぁ~」

少女の声を聞く間もなく、人買いは必死の思いで立ち上がると、転びそうになりながら、走り去って行った。


それが、この謎の美少女・藍との出会いだった。
それから十年と少し、与一はずっと、藍と共にある。

痩せて骨ばかりの貧弱な子供だった与一は大人の男になり、色町の、そのまた裏道にある小さな家を住処に、藍に殺し屋の技術を叩き込まれて、裏の世界ではそれなりに有名な、一流の殺し屋となった。