周りにいる人らの目を盗み、裏手から店を観察する。

だがやはり、裏手は築地塀に囲まれており、中は窺い知れない。
人が、ばたばたと動き回っている足音が、僅かに聞こえるぐらいだ。

そのとき、与一の目が、同じように店を窺う男を捕らえた。

与一は迷わず男のすぐ傍に移動すると、人混みを利用して男にぶつかった。

「あっすみません・・・・・・ととっわっ!」

ぶつかると同時にバランスを崩し、男の懐に飛び込む。

「おぅっ。何でぃ、危ない・・・・・・」

「す、すみません」

慌てて頭を下げて謝る与一に、男は言葉を呑み込み、気ぃつけろよ、と言い捨てて、足早に去っていった。

与一はその後ろ姿を見送ると、もう一度店を見上げ、そっと現場を離れた。