「確かに俺は、お三津を好いていたよ。でも、別れて長いじゃねぇか。しかもお三津は、今や女郎だしなぁ。何せお三津を好いてたのぁ、十のガキの頃だからな。年上の女性への、憧れだったのかも、とも思う」

「憧れねぇ・・・・・・」

ぼそりと言って、与一は少し考えた。

思い返してみれば、村にいた頃は、確かに与一の周りには女子(おなご)が群がり、何かと世話を焼いていた。
与一より小さい子供もいたが、世話をしてくれるのは、大体が十やそれぐらいの女子だった。

女子に囲まれていたわりに、特に誰にも憧れという気持ちを抱いたことはないなぁ、と思い、与一はちらりと三郎太を見た。

お三津と三郎太は、確かにお三津のほうが年上だが、一つしか変わらない。

それは、年上の女性への憧れというよりは、ちゃんとした初恋ではないのか。