与一はうんざりといった表情で振り返った。

「お前もか。何で皆、お三津お三津って気にするんだ」

「皆?」

三郎太は、きょとんとして与一を見ている。

「俺を育ててくれた人も、俺がお三津のことを口にすると、不機嫌になる。俺が昔のことを思い出すのにお三津が絡んでくるのは、お三津が何かと世話を焼いてくれたからだ。お三津のことしか覚えてないっていうほうが、正しいぐらいなのに」

憮然と言う与一に、ぽかんとしていた三郎太は、しばらく与一を見た後、感心したようにため息をついた。

「はぁ。お前は相変わらず、年上に好かれてるんだなぁ」

「年上・・・・・・?」

藍が年上だとは、あの見てくれからは、全く思えないのだが、事実、五歳の与一を十九になるまで育て上げたのは、あの美少女だ。