「あそこの奥方は、十六だ」

「・・・・・・んなぁにぃいい??」

三郎太が、慌てて与一の口を押さえた。

「馬鹿っ! でかい声を出すな」

与一も慌てて、こくこくと頷く。

「ま、お前の驚きももっともだ。確かにあそこに比べりゃ、俺とお嬢さんの歳の差なんて、可愛いもんだ。旦那さんのほうは、よくは知らねぇけど、三十ぐらい離れてるもんな」

手を離しながら、三郎太も頷く。
与一は息を吸い込み、気持ちを落ち着かせるように、大きく息をついた。

「そ、そんなおっさんに、何で・・・・・・。千秋屋のお嬢さんの友達ってことは、それなりに良いとこのお嬢さんだろう。まさか、女郎なわけでもあるまい」

女郎であれば、相当年上のお大尽でないと、身請けできるほどの財はないので、おかしいことはないが、千秋屋のお嬢様の友達が、女郎なわけがない。