「俺ができるのは、せいぜい贈り物をして、ご機嫌を取るぐらいだな」

「いや、お前とお嬢さんなんて、大したことはない」

「! そうか?」

ぱっと明るい顔になって、三郎太が身を乗り出す。

「それより、お嬢さんの友達だっていう下駄屋の奥方。そっちのほうが、やばくないか?」

噛み付くように言う与一に、三郎太は何のことだかわからないというように、きょとんとした。

「お嬢さんが十七ってことは、下駄屋の奥方もそれぐらいってことじゃないのか?」

「ああ、そのことかい」

ようやく合点がいったように、三郎太が息をつく。
そしてにやりと笑うと、元のように、与一に顔を近づけた。

「そうだな。何とあそこの奥方、うちのお嬢さんより、年下なんだぜ」

目玉が落ちんばかりに目を見開き、口をあんぐり開けた与一は、ゆっくりと視線だけを動かして、三郎太を見た。