「心のあとは つかねども 思いやるこそ あわれなれ」
与一が振り向くと、そこにはたった今別れたお三津と、さほど歳の変わらないような、一人の少女が立っていた。
与一は、目を見張った。
透けるように白い肌に、色素の薄い、長い髪。
着ている着物は、黒地に小さな桜柄。
大きな帯が締め上げる身体は、折れそうなほど細い。
だが与一が目を奪われたのは、何よりその顔立ちだった。
この世の者とは思えない、まさに天女のような美しさ。
少女は与一に、にこりと微笑むと、手に持っていた棒を差し出した。
甘い匂いが、与一の鼻に流れ込む。
「あげる」
棒の先には、与一の拳半分ほどの、鼈甲色のものがついていた。
「水飴よぅ」
言いながら、少女は与一の手を取って、水飴の棒を握らせた。
そして、つ、と顔を上げ、人買いを見る。
その瞬間、人買いが息を呑む気配がした。
与一が振り向くと、そこにはたった今別れたお三津と、さほど歳の変わらないような、一人の少女が立っていた。
与一は、目を見張った。
透けるように白い肌に、色素の薄い、長い髪。
着ている着物は、黒地に小さな桜柄。
大きな帯が締め上げる身体は、折れそうなほど細い。
だが与一が目を奪われたのは、何よりその顔立ちだった。
この世の者とは思えない、まさに天女のような美しさ。
少女は与一に、にこりと微笑むと、手に持っていた棒を差し出した。
甘い匂いが、与一の鼻に流れ込む。
「あげる」
棒の先には、与一の拳半分ほどの、鼈甲色のものがついていた。
「水飴よぅ」
言いながら、少女は与一の手を取って、水飴の棒を握らせた。
そして、つ、と顔を上げ、人買いを見る。
その瞬間、人買いが息を呑む気配がした。


