「どこ行っとってん」
三時間目の休み時間になるなり、建斗が不思議そうに聞いてきた
「えーっと…ちょっと、お喋りに」
少し考えてから、笑って誤魔化してみたが
「今田と?珍しいな。仲良かったっけ」
虚しくもバッサリと切られた。
「いや、何かこないだ帰り道ばったり会ってさ その時私ちょっとお金借りて…それを返してたの」
「お金ぇ?」
黙っていたさくらが 何で?と首を捻る
「どうしてもその日東町に急用があって ちょっと電車代借りたの」
東町、この言葉を出せば
さくらも信じるだろう。
そこには 私のおばあちゃんが住んでいるのをよく知っているから。
「まあ…返したならいいけどさ」
何となく、納得してくれたさくら
「なんや知らんけど、金ないんやったら俺にゆったらよかったのに」
さっきのセクハラ親父とは違って、優しい建斗。
二人共 ごめんね
嘘なんてつきたくないけど 二人には知られたくないの。
もちろん 純にも。
純が遅刻してくれて この日は少しほっとした。

