だいぶこの街の生活にも慣れてきた。 『住めば都』と言うけれど、確かにこの街は住みやすい。 あたしのような余所者(よそもの)にも優しい街だから。 この街のいいところは、海と山とに囲まれていること。 どこか、自分の生まれ育った街に似ている。 大海原は何もかもを包み込む優しさ、そして安心感がある。 謙と7年前に訪れた冬の海は、今とは対照的に、荒々しく冷たい飛沫(しぶき)を上げていた。 冬の寒さと荒々しい波とが、二人の現実を識らしめた。 ――あれが、謙と会った最後の日だ。