ゆっくりと、謙に近付いていく。 あたしからの電話を待っているのか、頻りに携帯を覗いている謙。 あたしをこんな気持ちにさせた謙を、ちょっぴり驚かせてやろう。 少しだけ遠回りして、時計台の後ろから現れる作戦にしよう。 謙がどんな顔をするか、楽しみになってきた。 一歩、一歩。 謙までの距離が縮んでいく。 相変わらず、謙は手元の時計と携帯を交互に見ている。 この背中を この謙の背中を ずっと追い掛けてきた。 手を伸ばせば届きそうで、でも届かないのが謙だった。