そんな紘夜だから、


愛しいと、
そばにいたいと、

想った。


「夕綺、こちらのお嬢さんはどなただ?招待客リストにいたか?」

訝しげに私を見る、お兄さんの視線。

それは、
まるで物を見定めるかのようにーー

「兄様、この方は紘夜の連れのようよ。
結構見栄えはいいでしょう?
これなら〝表〟の真影紘夜の婚約者、ってことでもいいんじゃなくて?」

ふふ、
と笑う夕綺さん。


「紘夜の、だと?」

一気に険しい表情になる。
〝紘夜〟と呼ぶ声に、嫌な感情があふれている。



ヘンだよ。

おかしいよ。


キョウダイなのに、こんな風に話すの?
キョウダイなのに、こんな風に呼ぶの?



『甘いンだよ、実織は』

思い出す、ジュン兄の声。

厳しいけど、愛情を感じた。



紘夜は、

ずっと、
こんな風に呼ばれていたの?