幸福論



「送ってくわ。」





私の腕を取った幸谷君が、それを手に替えて指を絡めてきた。





恥ずかしい…。

けど、やっぱりそれを離せない私。





きっと、女の子と手を繋ぐなんて、幸谷君にとったら、たわいもないことなんだろうけど…。

私には、幸谷君の一挙一動が驚きの連続で、胸がドキドキ痛む。





ドキドキする。

胸に感じる甘い痛みは、あまりにも心地よ過ぎて…。






公園から駅へと向かう道。






「家、どこらへんなん?」






「え…と、最近出来た大きなショッピングモールあるでしょ?

そこからバスで15分くらい。

後、ね、あ…、家の近くの坂道から海が見えるよ。

キラキラ凄く綺麗なの。

青くって、凄く凄く、綺麗。」






饒舌になった私に、楽しそうに笑う幸谷君。





「プハッ(笑)。

お前って、可愛いな。

天然って言われるやろ?

マジ、ツボるわ…(笑)。

坂道から海見える場所は、この街はいっぱいあるからなぁ。

最寄りのバス停とか、駅名とかは?

でも、ショッピングモール…?」






天然…?

ツボる?




なんだか少しだけ馬鹿にされた気分…。

でも、そうだよね。

坂道から海見える場所なんて、いっぱいあるよね…。







「近くのバス停は、桜台二丁目…。

駅は、桜台南駅…だよ。」







「あ、わかった。

新しい家いっぱいあるとこや。」






「…そう…かも。」