「なっ!何にもありませんよ!」
耳を赤くしながら焦って答える琴。
「怪しいなぁ〜」
そう言いながら森下は、琴の頬についていたクリームを人差し指ですくって自分の口に運んだ。
「……」
引きつる琴。
「美味しいですね」
森下は琴の反応を見ながら微笑んだ。
ムカつく琴だったが、愛想笑いをして席をたった。
世の女性はあーゆー男の仕草にいちいちときめくのだろうか?
「バカみたい」
琴はトイレで頬を擦るように洗った。
「あんな奴が白居くんの担任なんて……」
琴は鏡を覗く。
そして深くため息をついた。
白居真人……
何故、こんなに彼の存在が大きくなってるのかを考えていた。
抱きしめられたときドキッとしたこと、彼の言葉を信じたいと思っている自分、そんな自分自身に腹が立った。
「私が好きなのは、白居先生だけだよ…」
鏡の中の自分に言い聞かせるように語る琴。
だけど、その気持ちのどこかに矛盾を感じていた。
唇が小さく震えていることに気付いてしまったから。