白い吐息


「いや、戸部くん…気持ちだけでありがたいよ」

戸惑う琴。

「真人調査もアイツ傷付けない程度にするから!」

「真人調査?」

「小学校時代の友達とか、真人の周り、出来る限り調べてみるよ!」

戸部の目は輝いていた。

「あ…ありがと。でも無茶しないでね」

琴は苦笑いするしかなかった。

「もう真人が傷つく姿は見たくないから…」

ズボンのポケットに手を入れて優しく壁を蹴る戸部。

「私も…そんな姿、見たくないよ」

「先生が真人に本気で良かった」

「恥ずかしいけどね」

琴は両手で頬を押さえた。

「生徒と教師の恋なんて、辛いだけだと思ってた」

再び深刻な顔つきになる戸部。

「大変だとは思う」

「だから、真人にやめた方がいいんじゃないかって忠告した」

「……」

「でも、真人も先生も本気で良かった」

「戸部くん…」

「頑張ってね先生!」

ニッと笑って、戸部はピースした。

琴はコクりと頷いて、微笑み返した。


戸部の優しさが心に染みて広がってゆく。
真人が何故この少年にだけ心を許せたのか、琴はそれが分かって暖かい気持ちになった。
嬉しくて瞳が潤む。

教師が生徒の前で泣くのは卒業式だけ

琴は鼻をすすった。