桜の花が舞う頃に



「そんな突然こんなところに連れて来られても」

「いーじゃん、ファミレスくらいさ」


夜にかけてのこの時間は平日にもかかわらず人でにぎわっている。

今もお店の人達はせっせと食器を片づけたり注文を取ったり。

一息つく暇もないくらい働いている。



「あれ?もしかして話したくない感じ?」

「そういうわけではないけれど」

ちらちらと他の場所を見ていると“きょうや”君が私に視線を合わせる。



分かってる、あの“きょうや”とは違うんだって。

でも目の前に座っている男の子を

私は“きょうや”くんとどうしても呼ぶ事は出来ない。


「でも分からないんです、どうして私なんかに声かけたんですか?」


テーブルを見つめたままそう質問をする。


「そりゃあ、あの時のこと気になったっていうのもあったけど」

「だったら私はもうだいじょう」

「仲良くなりたいんだ」

「え..それってどういう...」

「一目ぼれって信じる?」


・・・・は?


驚く私の顔を見て目を丸くしたきょうやくんが

「ぷっ」と噴き出すと


「あははは、その顔傑作!!」

そう言って大きな声で笑い出した。


「ちょっと失礼じゃないですか?」

「だって、ウケるんだもん!あははははー」


あはははって...そんなに面白い顔してるのかな、でも..


「ふふ」

この人の笑い声につられて私も笑ってしまう。


「笑うんじゃん」

「え?」

「君はさ、笑ってる方が可愛いよ」


きょうやくんが笑顔でそう言うと、飲みかけのジュースに手を伸ばした。