桜の花が舞う頃に



その姿がとても痛々しい。


「覚えているんだな、あの時のこと」

俺の質問に、妃は頷いた。


「アイツが響夜の兄貴だってことも」

「知ってます」

「そうか」


再び流れる沈黙。

先に破ったのは妃だった。


「先生は私を憎んでますよね」

質問するような、確認するような言い方。


「アイツはずっと苦しんで生きてきたんだ」

俺は何年も見てきた。


アイツの苦しむ姿、悲しい姿を。

もう見たくはない。

見たくはないから美麗の姿を見たら少しは
スッキリするんじゃないかって

そう思ってアイツを呼んだんだ。


たった一言、妃の口から


「ごめんなさい」

そう聞ければアイツもきっと納得する、そう思ったから。


「なぁ妃、アイツがどんな人生を送って来たか、お前には
分からないと思う、でもな」

「私、たまに思うんです。このまま生きていてもいいのかなって」