桜の花が舞う頃に



「ここ?」

空を見上げながらそう呟く真姫。


「ああそうだよ」


とうとう来てしまった。

もう二度と此処に来る事はない、そう思っていたのに。


「行くぞ」

「あ、ちょっと!」


都内では有名な高級住宅街、最近出来たタワーマンション。


その最上階にあの人が住んでいると聞いたのはつい最近。

そして呼び出された場所もここだった。


エントランスに入り、オートロックを解除してもらい、エレベータに乗り込む。

はっきり言ってあまり時間はない。


愁夜がいつ動き出すのかこっちは分からないから。


「誰の所に行くか教えてよ」

そう言えばまだこいつに言ってなかったな

「あー親父?」

親父、そう言ったのはいつぶりだろう?

自分で言ってておかしくなる。


親父って、親父らしいことしてきたことなんてなかったからな


エレベーターは超スピードでどんどん上に上がって行く。
それにつれて耳までおかしくなりそうだ。

やがてチーンっという音と共にドアが開き急いで出る。


「ここか」


最上階には部屋が二つしかない。

新聞社っていうのはよっぽど儲かるらしいな。


ドアの前まで来て立ち止まる。


ここでインターホンを鳴らせばいいだけ。

それだけなのに..呼吸が乱れる。