あたしを知る奴、皆、あたしを信じない。

いや、信じたくない、みたい。



生まれた時から、あたし、少し変だったみたい。

貧乏で、何も無い家で、赤ん坊のあたしは、そこら辺に転がる石、玩具にして遊んでいたみたい。

色んな石。

丸いもの、尖ったもの、滑らかな肌触りのもの、ゴツゴツしたもの…。


集めて、転がして、また集めて…。

何が楽しいのか分からないけれど、赤ん坊のあたしは、無我夢中だったみたい。

石に夢中な間、泣きもしない、駄々もこねない。

手の掛からない子だ。

親は別段気にもしないで、あたしを放っておいたみたい。


それがその内、小さなあたしは、変なことを言い出す様になったみたい。




―――お月様の夜、風吹いて、消えるよ。





両親を指差して、あたしは言った、みたい。











その数日後。

あたしを親戚に預けて、出稼ぎに行った両親は、二度と戻らなかった。




大きな砂嵐、巻き込まれて、死んだらしい。

満月の夜だった。













あたしは、石を使うと、色んなものが見えるみたい。






少し先の未来。
遠くの景色。



石の占術が出来るあたし。






親戚も、村の皆も、子供のあたしをおかしな子だって、笑った。

あたしは、叫んだ。ずっと叫んだ。


その内、変な事を言い続けるあたしを、皆、疎ましく思った。


誰も、聞いてくれなくなった。


誰も。

だーれも。









だから、皆。










あたしの言った通り、消えた。


井戸の水を飲んだ皆、少しずつ、死んでいった。








井戸水に毒が入れられたって、知っていたあたしだけ。





独りだけ、消えなかった。








誰もいない景色。

これも全部、あたしは、ずっと前に見たことがあった。






風が無い、景色だってことも、知っていた。