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まだ7月、されど7月。
梅雨が明けてからというもの、着々と夏に向けて日差しは増していく。
真っ白な半袖のYシャツの袖をさらに折りたたみ、スカートは下着が見えない程度に短く、筋肉質な太ももが覗く。
黒髪ストレートの前下がりボブをさらさらと揺らし、真っ黒な黒豆のような瞳はこの暑さでドロンと気力落ちしていた。
「暑いーあ゛づーいー!!」
出来るだけ日陰を歩こうと天屋幸音は木の下を選び大股で歩いていく。
「幸音~待てよ~歩くの速すぎ。」
その後ろからTシャツに制服のズボンの裾をめくり上げた金髪頭がのそのそと、まるで石でも背負っているかのように一歩一歩を重く踏みしめながら歩いてくる。
そんなだらしない姿に幸音は軽くため息をつくと無視してズンズンと進んで行く。
「おーいー、ゆ、き、ねー!」
「あーもう!うるさい!あんたが昼に戒心軒のラーメン食べたいって駄々こねるからわざわざ学校の外まで食べに行ったんでしょ!
わがまま聞いてあげたんだから、もっとシャキシャキしなさいよ!
本当に…見かけは不良なのに、中身はお子ちゃまなんだから。」