「ねぇ、あそこのお店、評判通り美味しかったね!」


少し興奮気味に話し始めた私の横で、彼は優しく微笑みながら車を走らせている。


「ねぇ、聞いてる?」

微笑むだけで、なかなか答えを返してこない彼に不満の声を向ける。


最近、擦れ違いの多い二人の関係に不安を隠しきれずうつむいた。


そして私の頭の中には、あの日の電話が蘇る。


『24日、会おう』


とても、嬉しかったの。


まだ、あなたと一緒にいられると胸が高鳴った。


………なのに。


不安顔の私をよそに、車どんどんと坂道を上っていく。


『どこいくんだろ?』


顔が上げられない。


『もう、帰りたい』


そう思った時、エンジンが止まった。


「ほら、顔をあげてごらん」


彼の声で上げたその目に、飛び込んできたのは…


輝く街並、空一面の星屑たち。


そして、海に浮かぶ大きな船のあかり…


「すごい……」


思わず車から、飛び出した私は息をするのを忘れていた。


「君を、ノゾミを連れて来たかったんだよ」


追い掛けてきてコートをかけてくれながらそんな嬉しい言葉をくれた彼。


私は彼の肩にもたれ掛かり、その美しい宝石たちに見入っていた。


辛いとき、彼がいてくれた。


心がこわれそうなとき、側にいるそして声が聞けるだけで安心できた。


そんな思いがいま重ね合わす掌に集まる。

暖かく私たちを祝福しているような街の灯。


二人を見守る星屑たち。


「あっ!流れ星☆彡」


二人の未来を、そっと祈ろう。


今夜はChristmasEveなのだから…



=fin=