それが。 どんなに自分勝手で都合の良い考えか、分かっているけど――。 「伊藤君。もし良ければ……」 「うん?」 「海が、見てみたいかな?」 「海か。そうだな、今日は海に行くには良い陽気だな――」 見上げた伊藤君の横顔に、私だけに向けられる笑みが浮かぶ。 たぶん、これは、夢。 目が覚めれば。 朝になれば、消えてしまう、儚い夢――。 それでも。 今だけでもいいから。 この残酷でも、幸せな夢の中にいたかった。