これはやっぱり、断るべきだったかも。 仮にも、私にはプロポーズしてくれている彼氏がいるわけだし。 伊藤君にも、ハルカって言うれっきとした彼女がいる。 どう考えても、私と伊藤君が二人だけで『お出かけ』して良い道理がない。 断るべきよ。 心のどこかで、『良い子の私』が、そう囁く。 でも。 それはあまりに小さな声で、すぐにかき消されてしまった。 「え……と、お任せします」 「そうか。じゃあ、適当にドライブでもするか」 そう言って、伊藤君は慣れた動作で、四輪駆動車をスタートさせた。