「亜弓、お客さんよー」 ベッドの中で、そんなことを悶々と考えていたら、階下から母が私を呼ぶ声が聞こえてきた。 んあ? お客? 誰だろう? 私が実家に帰ってることを知っている人間なんて、そんなにはいない。 直也と、礼子さんと、 ハルカと、浩二と――。 「亜弓ーっ、伊藤さんて方がいらしてるわよー!」 『イトウサン』が『伊藤さん』に脳内変換された数秒後。 脳内が一気に漂白された。