好きだと、言って。①~忘れえぬ人~


「そうそう。それに何だか、下っ腹に肉が付いたから、ダイエットしてる~なんて言うのよ。あのスリムな体型で言われてもねぇ」


クスクス笑いつつ、活け終わった花瓶を、ベッドサイドのテーブルの上に持っていく。


「ここに、置いとくね」


と、テーブルに落とした視線の先にあるものに気づいて、私はものの見事に全身『ぴきん』と固まった。


えっ?


何これ?


そこにあったのは、写真立ての中に入れられた、妙に懐かしい一枚の写真。


淡い月明かりの下。


硬い表情をした濃紺の浴衣姿の私の隣に、はにかんだ様な笑顔を浮かべる、空色の浴衣姿のハルカが立っていた。


そして、その又隣には、白いTシャツとブルー・ジーンズ姿の伊藤君が、少し照れくさそうな微笑みを浮かべて写っている。


ドクン、と。


心の奥で、何かが大きく脈を打った。